HANAMUKE

日々への手向けにかきます

創作メモ

「ルル、リンゴ剥いてよ」

ああ、いいよ」

読んでいた本を伏せる

台所

ナイフを出す

「果物の剥くのだけは一等うまいね、君」

「どういう意味!?」

「料理が下手っていみだよ」

剥いたそばからへずる手

シャクっと音がする

「お前なあ…そんなことズバッとよく言えるよ」

「なんでそんなに上手くなったんだ?お前が果物を食べるのなんか稀なのにさ」

「あ〜…母さんが果物が好きでさ、昔からはいあんた剥く当番ねって押し付けられてたんだよね」

「ふ〜ん」

もうこの時にはモールの家が特殊で家を出ていることをルルドランは知っていた

少し伺うような顔をする

「ルルの母親がそういった人でよかったよ。だから俺は形のいいうまいりんごを食えたわけだし」

モールは自分の家の母を否定したとしてもその況をひとの家に持ち込むほど頭が悪いわけではなかった。

「君には好きな果物があるか?」

「ん〜そうだな…食べやすさで言ったらマスカット味なら洋梨かな」

「見事に淡いグリーンばかりだってあはは!」

「なんだよ!文句ある?」

ガチャガチャとフォークを漁っている

モールはその姿をじっと見て

(フォークを使うのか…育ちがいいもんだな…)

なんて考えていた

「ちょっと!なんで半々にしといてくれないのさ?!俺の分ちょっとしかないじゃん」

「俺の家の果物だよ俺の勝手さ」

「はあ〜〜だからお前よく喧嘩売られんのって言ってもモールにはわかんないだろうけど!」

ザクッとフォークを突き立てた

「おっと皮肉は食わないよ」

軽快に笑って読みかけの本に目を落とした

「今日は天気がいいから図書館にでも行こう」

「天気…?」

曇で薄ぼんやりとした町並みが広がっていた